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2006年10月 6日 (金)

吉見義明「従軍慰安婦」分析(1)

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なぜ韓国の慰安婦についてだけが強烈に恨として残って、他地域とは落差があるのかを考えていましたが、どうもピンと来ません。

事を朝鮮半島の民族性に帰してしまえば話は簡単です。
中国、日本に抑圧され続けた朝鮮半島の歴史がそこに住む人達にどのような鬱屈を与えてそれが今どのように作用しているかを話せば話は簡単かと思います。

しかし今まで私が調べた事でそれを話せばおそらく浅薄になってしまいましょう。
遠回りのようですが、吉見教授の本を細かく見ていくことにしました。
この本は現在も常に、強制連行肯定派のバイブルになっていますので、これについて暗記するほど深く読んでいくことで恨の意味がわかるかもしれません。

そういう訳でしばらく吉見義明教授の「従軍慰安婦(岩波新書)」の内容をできる限り細かく分析していきたいと思います。
参考上、「従軍慰安婦資料集(大月書店)」と秦郁彦教授の「従軍慰安婦と戦場の性(新潮選書)からの引用も多くなろうと思います。

まずこの本の構成ですが、序文から始まって
Ⅰ.設置の経過と実態
Ⅱ.東南アジア・太平洋地域への拡大
Ⅲ.女性たちはどのように徴集されたか
Ⅳ.慰安婦達が強いられた生活
Ⅴ.国際法違反と戦後裁判
Ⅵ.敗戦後の状況
終章
となっております。

まず序文から読んでいきましょう。
「問題の浮上」
73年に千田夏光が「従軍慰安婦」を刊行して、その実態の究明に挑んでいたし、従軍慰安婦の問題が今までまったく意識されていなかったわけではない。しかし、問題の重大性についての社会的関心は決して広くはなかった。
「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)などを中心とする韓国の女性運動によって問題が社会化したのである。

問題が社会化したのは吉田清治の著書と朝日新聞のキャンペーンによるものが最大なのですが、これについて触れられておらず、社会的影響が吉田に比べると小さかった千田夏光の問題が取り上げられて吉田著書について触れられていません。
これは吉田著書がフィクションであることを吉見教授も認識しておりますので取り上げる訳にはいかなかったのだと思います。
吉田の詐話が素になって顕在化した問題なのですから、それが嘘であったと判明した時点で問題はもうゼロになってしまうはずなのですが、それが解釈論になって問題が複雑化しているのが慰安婦問題のもどかしいところです。
本音を一言言うと、往生際が悪いように感じています。

挺対協について、かの協議会が主体性を持って慰安婦問題を取り上げたような記述ですがこれも違いますね。
挺対協の設立は1990年11月16日です。
既に第一次提訴が終わった後のことですので青柳敦子さんによる問題提起があってそれを受けて発足したと見るのが自然です。

日本政府が認めてこなかった証拠として何度も登場する清水局長の失言が取り上げられています。
戦後五十年間、謝罪・賠償・名誉回復・個人賠償の問題がまったく未解決のままであった理由は、何より、日本政府のこうした姿勢にあった。敗戦に際して、日本政府が組織的に公文書を破棄・隠滅したことはよく知られているが、そのため国家が関与した証拠がないとして、このような発言が可能だったのである。

よく調べずに軽率な発言をしてしまった清水局長は非難されてしかるべきですが、言葉足らずの答弁を大げさに言って問題点を転換させるのはトリックです。
この言葉でもって、吉田詐話は最初から問題ではなくて、日本政府が関与を認めてこなかったのが一番大事な問題だというような捉え方ができるようになっています。
ちょっと悪質ですね。このトリックは。

この失言を覆すものとして吉見教授が資料を出したわけですがこの資料について秦郁彦教授はこう述べておられます。
防研図書館の「陸支密大日記」は三十年前から公開されていて、慰安婦関係の書類が含まれていることも、軍が関与していたことも、研究者の間では周知の事実だった。
慰安所を利用した軍人の手記や映画やテレビドラマのたぐいも数多く、この種の見聞者をふくめれば、軍が関与していないと思う人の方が珍しかったろう。それをやや舌足らずの国会答弁に結びつけて「国としての関与を認めてこなかった」とこじつけたのは、トリックとしか言いようがない。(略)
わたしはこの頃、他のテーマで防研図書館へ通っていて、旧知の吉見氏から「発見」と「近く新聞に出る」話も聞いていたが、ニュースになるほどの材料かなあと疑問を持った記憶がある。

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